母さん、僕のあのスポーツ用具一式、どうしたでせうね?
今年の夏、僕は電車に忘れ物をしました。
その日は会社帰りにバスケをする予定があって、バスケットシューズ、Tシャツ、ハーフパンツ、パワータイツ、替えのパンツ、靴下、タオル、使い捨てコンタクト、ヘアワックス、防臭スプレーという一式が詰め込まれた袋を電車の棚に置いたまま、僕はJRから地下鉄へと乗り換えてしまいました。
途中で気がついてJRの落とし物センターに電話しました。
「十五分くらい前なんですけど、電車内に忘れ物をしました。車内を調べてもらうことはできませんか?」
「そういうことはやっていません」
「え?どうして?車掌さんとかに頼めないんですか?たまに見かけますが」
これがその職員の癇に障ったらしく
「車掌はそんなことしませんから!それに毎日たくさんあるんだからいちいち対応できません」
と半ギレでバカにするような口調で言われました。
「また後で電話してください。夕方には車内の清掃もするのでそのときにあれば届くでしょうから」
「それと駅に届けを出しておいてください。一週間くらいで見つかると思いますよ」
乗ってた電車も分かってるし、今探してくれればすぐ見つかるのに。。。
ちなみに、後日分かったのは、忘れた直後で電車が分かってるなら、落とし物センターではなく、駅で駅員さんに直接言えば車内の捜索もしてくれるということでした。
落とし物センターの人は、駅員と車掌の区別がしっかりついてるから、車掌はそんなことしないと言ったんでしょうね。もうちょっと柔軟に考えてくれてもいいと思うんだけど。
結局、その後数日に渡り、日に何度か問い合わせをするも見つからずです。
あ、そんなJRの対応は本題ではありません。愚痴言ってすみません。僕が忘れ物をしなきゃよかっただけです。
しかし、誰が使ったか分からないスポーツ用具一式、持ち帰る人なんていないと思ったんですけどね。
お金になるようなものでもないし。
でも、電車内で読み捨てられた週刊誌を集める仕事をしている人たちがいるじゃないですか。
彼らにとっては、靴まで揃った服一式が入っているわけですから、案外ラッキーな拾い物なのかもしれません。
夏ならTシャツに短パンでも問題ないですし。
そしてある日突然、知らないおじさんが、かつて僕がしていたのと全く同じバスケットスタイルで、週刊誌を集める仕事をしているところを目撃してしまうわけです。
僕は驚き、「お前が犯人か!」と怒りながらも、声をかける勇気も今更返してもらおうという気もなく、ただただその光景がおかしくて笑ってしまう。
そんな妄想をしているうちに、夏は終わってしまいました。
「母さん、僕のあのスポーツ用具一式、どうしたでせうね?」